全ての歯を奥歯までしっかりと咬み合わせた時、通常2~3ミリ程度の重なりがあるのに対し、上の歯が下の歯を隠すほど深く重なる状態が「過蓋咬合」です。ここでは、過蓋咬合の特徴や原因、過蓋咬合を放置することのリスクや、インビザライン治療との相性などについてまとめています。
過蓋咬合は、上下の噛み合わせの重なりの度合が大きい状態であり、「ディープバイト」とも呼ばれる不正咬合の一種です。
そもそも人間の歯は上の歯が下の歯よりもやや外側に出ており、歯を合わせた時に下の歯の上部が隠れること自体は異常ではありません。しかし、過蓋咬合では下の歯が半分以上見えなくなったり、上の歯にすっぽりと覆われてしまうことが特徴です。
過蓋咬合の程度は人によって差があり、具体的に何ミリ隠れたら即異常と決めつけることはできません。ただし、一般的な目安としては以下の2点に注目します。
もしも上記の条件のどちらか一方にでも当てはまっている場合、歯科医へ相談してみることをおすすめします。
若く健康な人の場合、過蓋咬合であってもそれほど不具合を感じていないケースがあるようです。しかし、過蓋咬合による悪影響は加齢とともに大きくなっていき、様々なトラブルのリスク要因となるため注意しなければなりません。
過蓋咬合では上の歯が下の歯を覆い隠すように重なるため、特に下あごの自由な動きが強く制限されてしまいます。また、場合によっては常に下あごを奥へと押し込むような力がかかってしまうこともあるでしょう。
この結果、顎関節に大きな負担をかけるようになり、顎関節症などの発症リスクを上げることは無視できないポイントです。
過蓋咬合では、下の前歯が上の前歯の根元へ当たりやすくなり、上あごや上前歯の歯茎を傷つけやすくなります。そのため、口内炎や歯周病といった症状の発生リスクが高まってしまいます。また、上の前歯を斜め上に突き上げることで、上顎前突症の悪化させる可能性もあるでしょう。
さらに、上下の前歯のかみ合わせに不具合があるせいで、歯にかかる圧力が正しく分散されず、奥歯などに過度な負担がかかってしまうことも重要です。 過度な負担がかかった奥歯が削れると、虫歯リスクが上昇したり、さらにかみ合わせが深くなって過蓋咬合が悪化したりといった問題へ発展します。
過蓋咬合は歯への負担が大きくなるため、虫歯治療で使われた詰め物や被せ物、義歯を破損する可能性が高まります。
過蓋咬合の原因としては様々なものが想定されるため、複合的に考えなければなりません。
上あごが大きすぎる、下あごが小さすぎるなど、歯の土台となるあごの骨のバランスに不具合があることで過蓋咬合になるケースは少なくありません。
また、あごの骨に異常が発生する原因としては、遺伝的なものから後天的なものまで様々であり、カウンセリングで詳しく確認することが必要です。
虫歯や事故、または生まれつきの原因によって、下の永久歯の準備が整う前に乳歯が抜けてしまい、上下のかみ合わせが過度に深くなってしまうケースがあります。 過蓋咬合の治療開始は早いほど良いとされており、永久歯が生えそろった段階で出来るだけ早く矯正治療を始めることが理想的とされています。
無意識に歯を食いしばったり、睡眠中に歯ぎしりをしたりしている場合、奥歯が摩耗していき、徐々に過蓋咬合が進行してしまうこともあるでしょう。
上下の奥歯をきちんと合わせた状態で、下の歯が半分以上見えている場合、インビザラインによる治療も比較的簡単だとされています。
しかし、完全に下の歯が隠れていたり、上あごに下の歯が完全に食い込んでしまっていたりする場合、インビザラインだけでの治療は難しく、外科的アプローチが必要となるケースもあります。
また、大人の過蓋咬合は子供の過蓋咬合よりも難症例となるため、どのような治療が望ましいかは歯科医とじっくり相談するようにしてください。
過蓋咬合は人によって程度に差があり、また若い頃はそれほど不便さを感じないことも珍しくありません。
しかし、過蓋咬合は放置するほど悪化する場合が多く、やがて歯や歯茎だけではなくあご全体にまで影響を及ぼすような深刻なトラブルを招くこともありす。 比較的軽度の過蓋咬合はインビザラインで治療することも可能なため、なるべく早い段階で歯科医へ相談して、適切な治療を始められるようにしていきましょう。
医師吉田 聡美
インビザライン治療を検討するならクリニックのドクターに注目