下あごや下の前歯が前方へ突出している状態は「下顎前突症」と呼ばれ、一般的には「受け口」や「しゃくれ」としても知られる不正咬合の一種です。ここでは下顎前突症の特徴や原因、弊害やインビザラインとの相性などをまとめて解説していきます。
下顎前突症とは、下あごや下の前歯が前方へ突出している状態の総称です。また、人の歯は正常では上側が下側より外側に位置しているため、下顎前突症は「反対咬合」と呼ばれることもあります。なお、一般的には「受け口」や「しゃくれ」といった呼び方でも知られています。
下顎前突症は原因や状態によって複数のパターンに分けられ、それぞれに応じて治療難易度も変わることが一般的です。そのため、まずはクリニックで詳しく検査することが必要です。
下顎前突症や受け口がもたらす弊害としては、外見的な問題から機能的な問題まで複数のものが考えられます。
下顎前突症で最も簡単にイメージされる弊害の1つが、「受け口」や「しゃくれ」としても知られた見た目上の問題です。
下の歯だけの問題なのか、下あご全体が出ているのかで雰囲気も変わりますが、特に下あごが突出していることで特徴的な顔立ちになることも少なくありません。
下顎前突症がひどい場合、一部の発音が正しくできないといった発音障害を伴うことがあります。
歯列の状態によって、正しく食べ物を咀嚼できず、消化器官へ負担をかけやすくなります。消化器官への負担が慢性化すれば、消化不良や胃腸障害の原因となるため、気をつけなければなりません。
かみ合わせが悪くなることで、顎や首の筋肉へかかる負担が増大し、頭痛や肩こりが慢性的な症状として現れることもあります。
あごの骨や関節への負担が継続することで、顎関節症のリスクが高まります。
重度の下顎前突症では、口唇の閉鎖が不十分になり、口腔内が乾燥しやすい状態になります。唾液は自浄作用といってむし歯や歯周病から守る作用がありますが、その作用が下がることで、歯周病や虫歯のリスクが高まります。
その他、下顎の過成長や上顎の劣成長によって下顎前突症が引き起こされている場合、他の不正咬合を併発していることも多く、歯磨きがしにくくなることによって虫歯や歯周病のリスクが上がります。
下顎前突症のパターンや原因は、大きく3種類に分けられます。
下あごの骨の成長異常や変形は、下顎前突症の大きな原因です。 下あごの骨の成長異常は遺伝的な理由や、脳腫瘍、外傷や全身疾患など様々な理由があります。
下顎前突症では、下あごの骨は定位置にあるものの、下の前歯だけに位置の異常がある場合があります。
前歯の生え方がおかしくなる原因としては、歯のサイズが顎の骨に対して大きいといった外的要因だけでなく、舌で歯を押すといった癖(舌癖)が原因になることもあります。
通常、口を閉じている時の人の舌は、上の前歯の裏にそっと接するような状態で固定されています。しかし、人によっては舌先が下の歯へ接したり押したりしていることもあり、これもまた下顎前突症の原因です。
遺伝的要因や外的要因で上あごの成長がきちんと行われず、下あごよりも引っ込んだ状態になっている下顎前突症もあります。 この場合、治療には口腔外科的アプローチが必要なことも多く、充分な検査と状態確認が必要です。
下の歯の突出といった歯の生え方の問題であれば、通常はインビザラインで矯正可能です。 ただし、下あごが小さく、歯が移動できる充分なスペースがない場合、抜歯が必要になることもあります。
下あごや上あごの骨に異常がある場合、インビザラインだけでは治療が困難です。 骨格性の下顎前突症では、外科手術で骨の形成を行う、SSROやIVROといった手術が必要になることもあります。その場合術前術後に矯正治療を行うこともあり、それに対してインビザラインを用いることもあります
小児期に治療を行うことで予防できることもあります。インビザラインのシステムの中にはインビザラインファーストという小児の骨格発育へアプローチできるものもあり、将来的な不正咬合を予防できる場合もあります。
下顎前突症は受け口やしゃくれなどとも呼ばれ、一般的に知名度の高い不正咬合の一種ですが、実際の症状や程度は人によって大きく異なります。 また、患者によってインビザラインでの矯正が難しいケースもあり、まずは充分な検査環境と技術を備えたクリニックで、正しく歯と骨の状態を診察してもらうことが大切です。
医師梅山 遼
※本サイトに記載されている、『インビザライン矯正』、『インビザライン治療』とは、日本矯正歯科学会が呼称するカスタムメイドマウスピース型矯正装置のことです。
インビザラインを検討するならクリニックのドクターに注目