歯並びが乱れているような歯列を叢生(乱杭歯、八重歯)と呼びます。また、犬歯だけが前方へ突き出ている状態は八重歯と一般的に呼ばれています。ここではそれぞれの歯列の特徴や原因、問題点、インビザライン矯正との相性などについて幅広く解説しています。
歯並びが不揃いででこぼこになっている歯列は、歯科においては「叢生(そうせい)」と呼ばれ、一般的に乱杭歯(らんぐいば)やがちゃ歯と呼ばれます。放置すると深刻な健康被害をもたらす要因の1つです。
叢生の状態は様々で、多くの歯が横を向いていたり、または前後に重なるように生えていたり、さらには本来の生えるべき位置より少しずれた場所から歯が生えていることもあります。加えて、叢生は上あごや下あごのどちらか一方だけに顕著な場合があれば、上下の歯の全てで歯並びが乱れていることもあり、その状態は患者によって実に様々です。
叢生のなかで、特に犬歯が前方へ突き出ている犬歯唇側転移のことを一般的に八重歯と呼びます。
八重歯は、あごが成長していく中で乳歯から永久歯へと生え替わる際、永久歯が正しく生えるために充分なスペースが確保されておらず、結果的に他の歯へ押し出される形で前方(唇側)へ飛び出すことで生じます。
日本ではかつてチャームポイントの1つとして好意的に受け止められることもあった八重歯ですが、アメリカやヨーロッパでは八重歯も叢生と同様に不健全な歯並びの1つとして受け止められ、一部ではデビルトゥース(悪魔の歯)と呼ばれることもあります。(悪魔の牙のように見えるため)。そのため、現在では日本でも八重歯を治療して、正常な歯列を求める人が少なくありません。
叢生・八重歯には、様々な弊害があり、治療せずに放置すれば深刻な病気へつながるリスクもあります。
叢生などの弊害として最も大きなものの1つが、外見上の問題です。
口を開いた時、歯ががちゃがちゃに生えていると、どれほど目鼻立ちが整っていても良い印象を与えることは難しいでしょう。また、きちんとオーラルケアを徹底していても、歯並びが極端に悪ければそれだけで不潔な印象を与えてしまいます。
加えて、周囲がそこまで気にしていなくても、本人にとって乱れた歯並びがとても大きなコンプレックスとなり、人前で歯を見せて笑ったり、口を開けて食事をしたりといったことができなくなるケースも珍しくありません。このような場合、もはや問題は見た目だけにとどまらず、心の問題や生活の質(QOL)にも大きく関わってきます。
歯が前後へ重なるように生えていたり、横向きに生えていたりする場合、歯の隙間に食べかすや歯垢がたまりやすくなります。その上、歯みがきをしても歯ブラシの毛先がきちんと歯と歯の隙間に入らず、充分に汚れをおとすことができません。
すると、結果的にオーラルケアが不十分な状態になり、虫歯や歯周病のリスクを上げてしまいます。
歯垢がたまったり、虫歯や歯周病によって口内環境が悪化したりすれば、口臭の原因となります。 特に口臭はなかなか自覚しにくく、気付かない内に周囲へ悪い印象を与えてしまう要因にもなります。
歯並びが悪いことで、かみ合わせが悪くなり、様々な弊害が生じます。
まず1つが、きちんと食べ物を咀嚼することができず、消化に支障を来してしまうというものです。また、かみ合わせが悪いことで顎関節症が起き、肩こりや頭痛につながります。
その他にも、歯並び、かみ合わせが悪いことで、上下の歯へ均等に力がかからず、特定の歯だけに荷重がかかってしまうと、その部分が削れたり割れたりして歯が損傷してしまうことがあります。
損傷した歯は自然に元通りになることがなく、修復処置や、抜歯更にはブリッジやインプラントといった処置が必要になることもあるため治療を行うことが望ましいです。
特に小児の場合、叢生による消化不良が発育障害の原因となることもあり、健康的に成長するためにもまずはしっかりとご飯を噛んで、消化しやすい状態へできる歯並びを整えることが望ましいでしょう。
歯の生えている位置が正常でない場合、食事中に舌や頬の内側を誤って噛んでしまうリスクが高まります。 すると、噛んだ場所が血豆になることや、さらに口内炎ができてしまうこともあります。
叢生が生じる原因としては、歯とあごのサイズのバランスが崩れていることが一つに挙げられます。
乳歯から永久歯へ生え替わる際に、永久歯が正しく生えてくるためのスペースがあごにきちんと備わっていなければ、並んで生えることができず前後にずれてしまう可能性が高まります。
また、虫歯や事故などで、本来に生え替わるタイミングよりも早い段階で乳歯が失われた場合、永久歯の生えるタイミングがあごの成長よりも早まってしまうといったこともあり、叢生の予防には幼い頃からの歯科への定期健診が欠かせません。
その他、乳歯の脱落のタイミングは適切であったとしても、あごの成長が未発達なため、叢生になってしまうといったケースもあります。 このような場合、小児のうちに拡大床などを用いた矯正治療を開始する必要があります。
基本的に、叢生や八重歯はインビザラインで治療可能となことが多いです。
インビザラインは他のシステムと異なり歯列全体の移動ができるため、全体的に歯列が乱れている人でも改善ができます。
ただし、歯並びの程度や、抜歯の要不要よって治療期間が数ヶ月~数年と大きく変わるので、正しい治療効果を得るためには本人が責任を持ってインビザラインの装着を続けていくことが重要です。
あごが極端に小さい場合など、そもそも歯を正しく並べるためのスペースが抜歯などで対応できる限界以上の場合、インビザライン単独による矯正も困難です。
また、骨の状態が極端に悪ければ、先に外科手術で骨格を治療しなければならないこともあるでしょう。
また、小児期にあごの成長不良が見込まれる場合、インビザラインファーストという小児用装置を用いることで、改善できる場合もあります。
その他、虫歯や歯周病がある場合、まずは治療しなければインビザラインを始めるのは難しいでしょう。
口を開けた途端にがちゃがちゃの歯が見える叢生や、犬歯が飛び出している八重歯は、放置すると様々な健康被害や日常の不便を生じさせることが少なくありません。
インビザラインは叢生にも適応可能な矯正治療ですが、一方で叢生の原因や症状は人によって大きく変わるため、実際にどの程度の矯正期間がかかるのかなどはカウンセリングでしっかりと主治医に確認することが必要です。また、歯列の状態によっては抜歯や他の治療を併用しなければならないケースも考えられます。
医師梅山 遼
※本サイトに記載されている、『インビザライン矯正』、『インビザライン治療』とは、日本矯正歯科学会が呼称するカスタムメイドマウスピース型矯正装置のことです。
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